おかしくはないです

嫌いな言葉は「多幸感」

【否定と肯定】正しき者よ沈黙せよ

今の時代に見るべき!という評判を聞いて見に行ったところもあるけど予想よりもかなりカジュアルな内容で意表をつかれた。複雑な現実を丁寧に一枚の織物にしましたという社会派映画ではなく、今この時代に立ち現れている問題できちんと打倒すべきものを措定して立ち向かい方、立ち向かう難しさを描く活劇的な映画。しかもbased on real eventだから露骨なピンチは予告だけに止められる。多分そのピンチが実際に起こったら負けだから。それだけ現実がピンチって事なんだよね。その焦燥感にゾッとした。

裁判の被告は歴史学者のリップシュタットなんだけども、リップシュタットは法廷戦略でノー証言を貫くしアウシュビッツの生存者も証言を止められてモヤモヤ。実質的な主役は弁護をしつつアーヴィングの矛盾を直接暴くランプトンなのだけど、これはこれでまた現実の姿であるのよね。戦い方を知り、正しくあり、過去の悲惨な出来事に心を寄せることができる人にしかアーヴィングのように自覚なき煽動者(彼にとって物的証拠や証言を曲解して自分の都合のいいような歴史を作り出しそれをネタに講演会で笑いを誘うのはシンプルにコミュニケーションの手段なのだ)に立ち向かうことはできないのだが、圧倒的な数的不利にどうすんのって話。

映画としての面白さ以上に、ただ困難な現実を突きつけられたような気がした。日本はここの議論にすらたどり着いてないからね。