おかしくはないです

嫌いな言葉は「多幸感」

【ダンケルク】時よ等しくあれ、汝が名は故郷

彼らはじっと海を見る。目に見えるほどの距離にhomeがある。でもどうしてここにいるのだろう。あそこにhomeがあるのに。ここは違う、ここは、……。

戦争は時間をバラバラにする。あの人が死んだのはいつのことだったろうか。あの海岸までの道のりは永遠のような果てしなさだ。さて、僕の家にある思い出はもう遠すぎて、本当に平和な生活というものはあったのだろうか、とても信じられない。あの飛行機は、何十人も何百人もの人生を、まばたきするあいだに消し去っているよ。吹きすさぶ海岸の風は二日前のものか明日のものか。確かなことは今、生きていること。死にたくないということ。そしてさらに時間はちぎられて吹き飛ばされてバラバラになる。

夢のようなトム・ハーディの佇む姿のあとに、新聞紙が擦れる音と生き延びた兵士の視線が静かな劇場を支配する。時は一つになり、つかの間の平和は英国のひとびとの歓迎の声の中に取り戻された。だが、すぐにまた時は引き裂かれるだろう。彼らは故郷に、それ、を持ち帰りもしたのだから。