おかしくはないです

嫌いな言葉は「多幸感」

【おとなの事情】告発されるふたつの抑圧

なかよしな3組の夫婦と離婚ほやほやのひとりの男、7人がホームパーティ的な夕食の場で「今だけスマホをオープンにしよう。メールが来たら読み上げる。電話が来たらスピーカーフォンで話す」という地獄のようなアイディアを実行に移し案の定地獄のような状態になるお話。
私たちって秘密のない関係なのってニコニコしてるカップルが気持ち悪く見えるのは個別の人間性というやつをあまりに低く見積もりすぎているんではないか?と疑ってしまうからで、さいきんだと『ベイビィ・LOVE』の続編読み切りがそんな感じだった。ヤングな恋愛ではそれが理想なのかもしれない。
他人のメールを覗き見て喧嘩になってしまうのはその人が不誠実なことをしているからとは限らない。スノーデンは「プライバシーを奪われることはあなたがあなたであることを奪われること」と言っていたが、それゆえに恋愛関係では特に相手の秘密を知ろうとし、縛ろうとする。ただ愛するゆえにと偽って。私たちは他人から奪いたくて仕方がなく、そのための口実としてはもっともパーソナルな関係性とされる恋愛というやつはめっちゃ便利すぎるのだ。

個人の関係のうちで処理できることのうち、しかしある人の秘密だけは本来ならば秘密として後ろめたさを感じるべきではないものだ(と断言しているわたしもおそらく不誠実だね)。しかしとあるトラブルによってそれは夫婦間の不誠実としてデコレーションされ、そのトラブルに乗じてその秘密そのものもモラルに反したものとして扱われてしまう。
ここで暴かれていることのとんでもなさはちょっとした告発で、つまり差別というやつは、偏見によって対象に強制的に秘密を持たせるものでありつつも、その上、その人が秘密を持っているということで社会に対して不誠実であると裁く、二段階での残酷さを有しているんである。
そして後者の不誠実さは誰しもが持っているがゆえに(不倫から配偶者への不信まで)、「あなたがXXだから責めているのではなく、あなたがそれを言ってくれなかったからわたしは非難しているのだ」と、社会が偏見を持っていることの加害性をうまーいこと隠蔽してしまう。あなたもわたしも、同じように悪いことしてるもんね、わかるよ、つらいよね。って全然違うっつーの。
っていうかあの結末はああしなければいけなかったのは理解できるしそれでいい問題ないよって思うけど、マリカの件だけはどうすんだよそのままじゃ駄目だろ感がすごい。しかしこれもわたしのバイアスなのだろうか……。いやいや!