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おかしくはないです

嫌いな言葉は「多幸感」

【ドクター・ストレンジ】あんまりですよ師匠

傲岸不遜な医者が西洋医学に絶望して東洋に赴きLSD的なぶっ飛びトリップ体験をして目覚める話っていうとニューエイジかよって話なんだけど、肝心のLSD体験が完全にサイケ祭りだったので多分に自覚的。そっちの道は危険やぞ。

日本のフィクションにおける〝魔術〟って魔術書とか魔女の帽子とか西洋的なものを想起することが多いけど、ニューヨークの天才外科医にとっての魔術とはすなわち東洋の神秘になるのは面白い話だよね。外科手術と錬金術とか魔女の釜とかは多分地続きなんだろなあ。今時こんなオリエンタリズム丸出しなのも問題といえば問題だと思うが。

とはいえバトルではなくバーゲンによってある種の解決を図るのは非常に今時っぽいし、間を埋めるアクションの映像表現(建物ぐるぐるとか時間停止とか)にこそやりたいことが込められていて、そこにこそ今までドクター・ストレンジが見てこなかった異世界の自由さや果てしなさを見出すことができる。ミスターじゃないしマスターでもないドクターなんや!ってこだわるのは、「僕、マスターなんす……」というマスターキートンの含羞を思い出す。

自分で決めて弟子たちに周知したルールをこっそり逸脱して、それに納得できない弟子に「あいつは魂が硬い」って言うのはちょっと酷じゃないかなあと思った。私も多分、魂が硬いんだと思うけどさ。そういう、「本当に分かってる人たちで真理を決めて恣意的に運用する」っていう態度こそ、現代のカオスの根源じゃないかなとも感じるよ。メリル・ストリープMMAを「芸術じゃない」と言ったときに刺さったトゲが、また胸の中でうずきもした。