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おかしくはないです

嫌いな言葉は「多幸感」

【サウスポー】娘は娘で妻は妻

邦画をあんまり好んで見ない理由の一つに、どんなに熱中して鑑賞しててもフィルムに染み付いたジェンダー観に突然足払いをされて鼻の骨を折るくらい大怪我して結局その日いちにちが不愉快なものになってしまうことが結構頻繁にあるからというのがある。

その日本的ステレオタイプの地雷の一つに「母親が死んで娘が家事を取り仕切る家族像」というのがあって、まあ極北としては『はなちゃんのみそ汁』なんだろうしあれはフィクションではなく現実という事実にますます地獄。要するに、俺の面倒を見てくれる奥さんがいなくなったら代わりを務めるのは俺じゃなく娘。というやつであり、それを言うなら『となりのトトロ』だって相当に気持ちが悪い話であるわけだが、宮崎駿の巧みなところは「母親代わりをやらされることにサツキは反発している」ところを主題に入れ込んでいるのでそれほど違和感を覚えずに済ませられているが、別にそれは「児童労働が問題だ改善すべきだ」と彼が思っているわけではなく、「そういう反発するところも含めて子供はたまらない存在」という彼の性癖のある種の到達点を見ているからってだけである。何事も極めると高尚に見えるものだ。

『サウスポー』はボクサーが最愛の奥さんを失い娘と二人取り残されたところからどう再生していくのか?って話であるので、多分日本の映画だったら確実に「今まで奥さんが座っていた席、今は空っぽ。でも大ピンチの時にもう一度座席を見やると、そこには娘の姿が!」みたいなことやるんじゃないかとドキドキしてしまうわけだけど、もちろんそんなことにはならない。妻は妻、娘は娘で、娘に対して父親父親。その分別は当たり前のようでいて、でもやっぱり私はきちんとその当たり前を描かれると安心してしまう。

洋画ばっかり見てるよね、ではなく、邦画を見るには心構えがいるよ、って話なのです。

あと、HBOのパッケージで再現されるボクシングシーンもとっても親切でなおかつスピーディ。いらないラウンドはガンガン飛ばす。普段プロレスばっか見ている私も「なるほどボクシングに熱狂する人の気持ちもわかる」となったので、おっきな試合がWOWOWでやるようなら今度見てみようと思います。