おかしくはないです

嫌いな言葉は「多幸感」

【恋人たち】ジス・イズ・リアルジャパン

主演の俳優がブロック・レスナーあたりと戦っていた頃の中邑真輔に激似で目が離せなかった。ワークショップ出身の人ということでどおりで見かけたことがなかったはずだ(同監督の『ゼンタイ』は未見)、と思ったけど、別の監督ではどういう演技をするんだろう、と気になるくらい作品そのものに溶け込む演技をしていて、役者の佇まいとセリフの言い方が映画そのものと言っていいくらい、描きたいリアリティを役者によって実現していたように思う。

破格の災難によってギリギリのところで生きざるをえなくなった人がそれでも言葉がなくて手段がなくて「何言ってんだこいつ?」という扱いを受ける。

結婚の不幸部分を煮しめたような生活で他人のエネルギーにびくついて生きる人が物語の世界のような決意を演じる自分に満足する。

おちゃらけて見せてニヤニヤして見せることで自分の感情を矮小化して傷つかないようにしている人がそのせいで他人を侮辱し結局自分もさらに傷ついてしまう。

彼ら彼女らの一挙手一投足は身に覚えがありすぎるせいで(彼ら彼女ら自身としても、あるいは彼ら彼女らを追い詰める立場の人間としても)、「見ていられないよ〜」という場面が頻出。このいたたまれなさ、どこかで覚えが……と思っていたけどあれだ。『キラー・スナイパー』だ。ずんどこのどん底の人たちがそれでも知恵を絞っているつもりになってどんどんわけがわからなくなってしまう、必然的にどん詰まりにたどり着いてしまうあの状況。まさしく今のこの国、生きる人たちの現実。とにかくすごい映像だし、見るのも撮るのも覚悟がいるよ。

一応は希望を含んだ結末になっている……というふうに私が思えないのも、激昂して食事中にいきなりビンタ張ってくる旦那にあんなこと言われるエンディングが、さらなる地獄の入り口にしか見えないからなんだよなあ。